塾長メッセージ


 寺子屋小山台塾長 大澤 佳雄

 

政治の混沌と情報の混迷の中で「私たちは何を踏み台にして生きるか」、ここ数年寺子屋に参加したほとんどの方々が問うてきた課題である。特に最近の4年間はコロナ・ウィルス・パンデミックによる社会活動の制約があり、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルの異常ともいえるハマス攻撃で多くの人々の市民生活が蹂躙されている。資本主義・民主主義の総本山であるアメリカの「アメリカ第一主義」への傾斜と、勃興する中国への経済報復など世界情勢は、第二次世界大戦後の東西対立時代の危機をはるかに超える統御不能ともいえる危機に瀕している。

ベルリンの壁が崩壊した1989年までは、当事者たちはそれを否定するとは思うが、米国・ソ連が2台大国としてそれなりの暗黙の了解のもとにそれぞれの経済圏を形成してきた。その後の経済のグローバル化によって、アメリカは長期に亘って高い経済成長を続けたが、一方で大衆消費財の新興国への依存率を高め、その代表ともいえる中国経済の先進国化を助長してきた。また、アメリカの1980年以降の経済復興は情報技術の展開に支えられてきたが、その技術基盤を進展させたのは中国およびインドからやってきたエンジニアたちであった。中国は先進国の産業技術に習得とそれを凌駕する技術発展を国家計画(2015年発表 メイド イン チャイナ2025)に織り込んできたが、EV(電動自動車)を中心に自動車輸出台数では世界一をうかがうところまで来ている。2017年に登場したトランプ大統領は中国製品に高率の輸入関税をかけるなど制裁措置を実施した。また中国は経済成長の過程で軍事力の増強も図っており、東アジアに地政学的なリスクを高めてきている。日本にとって中国、アメリカはそれぞれ二大貿易相手国であり、その2国の対立は極めて大きなリスクをもたらしている。また軍事的対立もこれまで以上に高まっており外交的なかじ取りを誤ることはできない。一旦有事となれば市民生活が乱されるのは言うまでもない。

情報の混迷もまた大きな課題である。多くの日本人は政府広報、公共放送、大手新聞などの提供する情報は殆ど正しいものと理解し、行動の基盤としてきた。しかしながらSNSの発達などで、現場からの生の情報触れる機会が増え、マスメディアが選別している情報がいかにかたよったものかを実感する一方、誤った情報、偏った情報も多く、さらに意図的に誤った情報を流す企みからも身を守らなければならなくなっている。

 

寺子屋小山台の輪の中に入り、高い視点から世界を見直し、仲間同志の本音の意見のぶつけ合いを体験し、明日からの行動の軸や基盤を固める。それを実現するのは皆さんであり、その共同作業に参加されることを、寺子屋小山台の私たち世話役は期待している。